
尾ぐされ病は、プラティをはじめとする観賞魚に非常によく見られる病気のひとつです。
丈夫なはずのプラティのヒレが、気づいたらボロボロになっていたという経験をされた方は少なくないはずです。
早めに気づいて対処すればヒレが再生する可能性も十分ありますが、放置してしまうと命に関わる深刻な状態に進んでしまうこともある侮れない病気です。
尾ぐされ病の原因はカラムナリス菌
尾ぐされ病はグラム陰性細菌であるカラムナリス菌(Flavobacterium columnare)が魚の尾部に感染することにより引き起こされる病気です。
この細菌は感染先でタンパク質分解酵素を分泌し、組織を壊死させながら侵食していきます。
また、尾部以外にも感染し、口に感染すれば口腐れ病、エラに感染すればエラ病と呼び方が変わります。
これらを総じてカラムナリス感染症と呼び、原因菌は同じなので対処も同様です。
カラムナリス菌は水中に常在している細菌のため、魚の免疫力が正常であれば感染することはまずありません。
しかし水質の悪化などの影響でストレスがかかり免疫力が低下すると感染してしまうリスクが格段に上昇します。
つまり、尾ぐされ病が出たということは、水槽環境そのものに何らかの問題が生じているサインとも受け取れます。
発症しやすい時期と条件
水温が暖かくなってきた春先から初夏にかけて特に発生しやすいのが特徴です。
低床清掃が不十分だったり、水換え頻度が少ないことが原因で菌が増え感染しやすくなります。
カラムナリス菌は水槽に常にいる常在菌のため、季節の変わり目などプラティが弱りやすい時期に発症しやすいです。
また、急な水温低下でも感染することがあるため、水換えやヒーターの不具合には特に注意が必要です。
秋口から冬にかけてヒーターの設定を怠ったり、大量の水換えで水温が急激に下がったりするタイミングにも十分気をつけてください。
症状の進行ステージ
初期症状はヒレの先端が白く濁り、周囲が赤く充血することがあります。
病気が進行すると白濁は根元へと拡大していき、ヒレの先端部から裂けたり、重症化するとヒレはボロボロになってしまいます。
さらに病原菌は口やエラに転移することがあり、エラに感染してしまうと呼吸困難を起こして衰弱し、最終的に死に至ることもある恐ろしい病気です。
進行が速いうえに重症化すると治療が難しく、かかってしまうとあまり予後の良くない病気です。
日々の観察で「ヒレの先が少し白っぽいかな?」と感じた段階で迷わず対処に踏み切ることが、ヒレを守る上でとても重要です。
初期段階なら塩浴で対処する
尾ぐされ病の初期段階であればある程度の効果が期待できる方法として塩浴があります。
治療を行う魚は隔離用の水槽へ移しましょう。
塩には殺菌作用があり、寄生虫や病原菌の殺菌効果が期待できます。
使用する塩は一般に売られている食塩でかまいませんが、化学調味料が含まれている塩は避けたほうが良いでしょう。
塩浴の塩分濃度は0.5パーセントに合わせ、水1リットルに対し塩5グラムが目安です。
初期であれば1週間くらい塩浴を続けることで魚の体調が回復する場合もあります。
ただし塩浴はあくまで初期の補助的な手段であり、症状が進んでいる場合や改善が見られない場合は早めに薬浴に切り替えることを考えてください。
薬浴による本格的な治療
薬浴で使用する薬は観パラDやグリーンFゴールド顆粒がおすすめで、重度になってしまった場合はエルバージュなどを使いましょう。
薬ごとの特徴について整理するとエルバージュエースやグリーンFゴールドなどの黄色の抗菌剤が尾ぐされ病には有効です。
ニフルスチレン酸(エルバージュ)は主にフラン剤と呼ばれる系統の抗菌剤で、カラムナリス尾腐れ病などのよくある細菌性感染症の治療の第一候補と考えてよいでしょう。
ただしニフルスチレン酸は水草を枯らしてしまうので、水草が入っている場合は取り除く必要があります。
グリーンFゴールドはニトロフラゾン(フラン剤)とスルファメラジンナトリウム(サルファ剤)が配合されています。
塩浴・薬浴ともに言えることは、直接飼育水槽に入れないことです。
薬剤や塩が苦手なエビや水草、バクテリアにまでダメージを与えてしまうためです。
必ず隔離した別水槽で治療を行ってください。
治療中の注意点と水槽の管理
薬浴中は酸素が不足しやすくなるため、エアレーションを適切に行うことが大切です。
また薬によって光で分解されるものがあるため、遮光が必要な薬剤を使用する際はビニール袋などで水槽を覆う工夫をしてください。
魚を隔離しての薬浴は個体単位で見れば有効ですが、水槽全体で見ると問題解決には至っていないことがある点に留意しておきましょう。
発症した個体を治療している間も本水槽側の水質改善や底砂の清掃を並行して行わなければ、治癒して戻した後に再発するリスクが残り続けます。
再発を防ぐための日常管理
尾ぐされ病が再発する場合は、水換え頻度や飼育匹数を見直してみましょう。
予防には定期的な水替えをきちんと行い水槽内を清潔に保つことが最重要です。
毎日の餌やりの際はやりすぎないようにし、食べ残しで水質を悪化させないようにする工夫が大切です。
また、カラムナリス菌は水の硬度が高いほうが活動が活発になりますので、低く保てるように水質管理することをおすすめします。
常在菌であるカラムナリス菌は基本的に水槽内から根絶することが難しいため、プラティを健康に維持することが最善の予防策です。
人が季節の変わり目に風邪を引きやすいようにプラティも水温変化が激しい時期は調子を崩しやすいため、ヒーターを設置して水温のブレを少なくすることが予防に直結します。
病気になってから慌てるよりも毎日の観察と環境整備を地道に続けることが、ヒレをボロボロにさせない最大の防衛策と言えるでしょう。