いつの日からか熱帯魚の王様と言われるようになったディスカス。
美しい体色と気品あるたたずまい、確かに熱帯魚の王様と呼ばれるにふさわしい熱帯魚です。
しかし、そのようなイメージからか初心者には少々敷居が高い存在のように思われてしまう一面もあるようです。
実はディスカス飼育の基本は他の熱帯魚飼育とさほど変わりはなく、熱帯魚飼育の基本的知識とプラスアルファでディスカス飼育のコツさえ覚えてしまえばアクアリウム初心者にも飼育は可能なのです。
そんなディスカス飼育のコツをご紹介いたします。
目次
ディスカス飼育の水温管理
ディスカスは他の熱帯魚などと比べても比較的高水温を好みますので飼育の際は温度固定式のヒーターは使用せずにサーモスタットによる温度調整が可能なヒーターを使用するようにしましょう。
ヒーターの容量は60cmレギュラー水槽なら150w、60cmワイド水槽なら300w、90cm水槽なら400wを目安に35℃くらいまで上げる事の出来るサーモスタット式を用意しましょう。
通常飼育時の水温は30℃でいいのですが、病気などの治療の際には更に水温をあげることもありますのでそのような事態にも対応出来るものを準備しておきます。
ヒーター購入時には安全性は勿論のこと、水量に合わせたワット数、温度調整機能付きなどを確認して選ぶようにしましょう。
ベアタンクと底砂の関係
ショップや熱帯魚飼育の雑誌などでディスカス水槽をみると多くの水槽で底砂を敷かないベアタンク方式が一般的となっていますが、何故そのような方法で飼育されているのでしょう。
その理由には小型カラシンなどと違いディスカスが大食漢であることが挙げられます。
親魚にもなれば15cm程にもなるディスカスはフレーク状の餌のみでは栄養のバランスが保てず、ディスカスハンバーグやアカムシなどを好んで食べますのでその分、水槽を汚しやすくなります。
ソイルなどの底砂を敷いた水槽は濾過バクテリアの繁殖やpH維持には効果的ですが、水槽の底に溜まる食べ残しなどの確認や掃除が困難となり水質を悪化させやすくなってしまいます。
よってディスカスなどを飼育する際には食べ残しや糞などを掃除しやすいように水槽の底には何も敷かないベアタンク飼育が一般的となっているのです。
水槽のサイズと適正数
ディスカスはネオンテトラなどと違い成長とともに大きくなり、親魚になると大人の手のひらサイズにまで成長します。
よって幼魚と親魚では必然的に必要とする遊泳スペースも変わってきますのでその点も意識した計画的飼育が必要となってきます。
例を挙げますと6cm程度の幼魚期なら60cmレギュラー水槽で12匹位は飼育可能ですが、徐々に大きくなり10cm程度の若魚になるとその数では手狭になり、さらに親魚にまで成長した時には2匹位が適正数となります。
よってもし幼魚で12匹購入したとして全てのディスカスが元気に成長したら60cmレギュラー水槽が6本必要になることになります。
大抵の場合は90cm水槽などの大型水槽を準備して対応するので少々極端な表現になってしまいましたが、ディスカスは成長とともに大きくなり、遊泳スペースを必要とする事はご理解頂けましたでしょうか。
簡単にディスカスのサイズと水槽サイズによる適正数をまとめてみましょう。
6cm程度の幼魚
- 60cmレギュラー水槽 12匹位まで
- 60cmワイド水槽 15匹位まで
- 90cm水槽 30匹位まで
10cm程度の若魚
- 60cmレギュラー水槽 8匹位まで
- 60cmワイド水槽 10匹位まで
- 90cm水槽 15匹位まで
15cm以上の親魚
- 60cmレギュラー水槽 2匹(ペア)
- 60cmワイド水槽 4匹位まで
- 90cm水槽 12匹位まで
準備出来る水槽のサイズや環境から飼育出来るディスカスの数を把握するようにしましょう。
ディスカス購入時の選び方
幼魚サイズのディスカスを購入する際のチェック項目は幾つかありますが、まずは体の大きさに対する目の大きさを確認しましょう。
ディスカスは餌不足などにより成長障害を起こすと素直に体型に現れます。
他の個体と比べて顔の部分に対して目が大きいと感じたら成長障害の可能性がありますので購入は避けた方がいいでしょう。
またエラ蓋の開き具合や欠損も確認しましょう。エラ蓋の欠損は治る事は少なく、開き過ぎたエラ蓋も同様に完治は難しくなります。
口が曲がっている個体や下を向いている個体も奇形の可能性があるので購入してはいけません。
その他にも体表に艶がなく、ほかのディスカスに比べて動きが鈍かったり、水槽の底の方でジッとしているものも避けた方がいいでしょう。
このように体型や体の細部をチェックすることで元気な個体を選定することは可能ですが、初めてディスカスを購入、飼育する人にとっては少々判断がしにくい場面に出くわす可能性もありますのでそのような時は慌てて購入せずにショップを何店舗か回ってみて見比べてみるなどして少しずつでも知識をつけていきましょう。
早く水槽に投入したい気持ちはわかりますが、何よりも優先すべきことは出来るだけ元気なディスカスを購入する事です。
まずは丈夫な個体を手に入れる事がディスカス飼育を成功させるための秘訣でもあるのです。
ディスカスを水槽に入れるまで
ディスカスは水質や水温の変化に非常に敏感な熱帯魚ですので購入から家の水槽に投入するまでの作業には特に気をつけましょう。
水槽投入の際にどれだけディスカスにストレスやダメージを与えないで済むかがディスカスを元気に育てるコツでもあるのです。
逆にこの時の作業を手荒に行うと水槽投入後直ぐに死んでしまうような事もありますので気をつけましょう。
まずは新しく水槽を立ち上げる場合とすでにディスカスを飼育している場合で注意点が変わってきます。
新しく立ち上げた水槽に入れる
新しく立ち上げた水槽にディスカスを入れる際は水槽立ち上げから最低でも1週間位は水を回してからディスカスを購入するようにしましょう。
ディスカスを購入したら水温とpHを30分くらいかけてゆっくり慣らしていきます。
また購入時のスレ傷などから感染症を引き起こす可能性もありますので気になるようでしたらエルバージュやグリーンFゴールドなどの細菌性の薬浴剤を規定量の半分程度用いてトリートメントするのも効果的です。
上手く水槽に投入できたらその日の餌やりは控えましょう。
翌日、ディスカスがストレスなどで黒化するなどの異常が見当たらなければ少量のディスカスハンバーグやアカムシなどを与えてみましょう。
ディスカスを既に飼育している場合
飼育しているメイン水槽とは別にトリートメントタンク用の水槽を用意して新規導入と同じように管理をします。
このトリートメントタンクを用意せずに直接購入してきたディスカスをメイン水槽に投入することは病気の持ち込みなどの可能性がありますので出来るだけ避けるようにしてください。
もしメイン水槽に病気を持ち込んでしまった場合、購入してきたディスカスのみならず今まで元気に泳いでいたディスカスまでもが病気に罹ってしまうこともありますので注意が必要です。
トリートメントタンクに入れたディスカスは2週間程様子を見て問題なければメイン水槽に移すようにしましょう。
ディスカスの餌と与え方
ディスカスの餌にはディスカス専用のドライフードが価格面や保存性の良さから初心者にはオススメです。
ただ、ディスカス愛好家はディスカスハンバーグを中心として育成することが普通です。
ディスカスハンバーグは牛のハツやエビなどを原材料にした餌で栄養価が高く、基本育成用、色揚げ用、高カロリーなど様々なタイプが市販されていますので用途にあった給餌が可能です。
おやつとして冷凍アカムシやイトメなどの生餌を与えるのも栄養バランスを保つ上では良い方法と言えます。
餌やりは1日に2〜3回、15分程度で食べきる量を与えるようにしましょう。
もし食べ残しが多くでる場合などはそのままにせずにネットなどで救い、水質の維持に努めるようにすると水替えの頻度も少なくて済みます。
ディスカスの繁殖
熱帯魚の王様であるディスカスを飼育し始めた方ならいつかは繁殖を行ってみたいと思うはずです。
ディスカスの繁殖は初心者には少々難しいとされていますが、難しいからこそ卵を産ませて稚魚を増やせた時の喜びも大きなものになるのです。
そんなディスカスの増やし方についてご紹介いたします。
雄雌の見分け方とペア
ディスカスはシクリッドの仲間では珍しく雄雌の判別が難しい熱帯魚ですのでショップで売られている個体からビギナーの方がオスメス1匹ずつ選んで購入するのは非常に困難です。
また価格の安い幼魚になると更に判別は難しくなりますので多少割高であってもペアで販売されているものを購入するのが得策でしょう。
ただし雄雌のペア販売であってもまだつがいとなっていないケースもありますので購入後直ぐに繁殖が出来るわけではありません。
確実に繁殖を行いたいのであればお店の水槽で繁殖行動が確認出来ているペアを購入するようにしましょう。
金銭的な面やどうしても幼魚からじっくり飼い込んで繁殖を行いたいのであれば90cm水槽に成長した成魚5〜6匹程と産卵筒を入れ、ディスカスにテリトリーを形成させます。
水槽内で一番優勢な雄と雌が産卵筒近くに陣取り、他のディスカスから独占しようとする行動が見られたらその2匹でペアとなっている可能性が高いのでそのような行動が見られたら他のディスカスを別の水槽に移すようにしましょう。
やがて産卵行動が始まると1時間程度で約100〜200個の卵を産みますので産卵中はなるべくディスカスを刺激しないように遠目で見守りましょう。
産卵経験の浅いペアは卵を食べてしまうこともありますので産卵行動が終了したら食卵防止ネットを被せる事をお勧めします。
産み付けられた卵が受精していれば水温30℃の環境下なら約24時間程で卵が黒くなりはじめます。この時点で黒くならず白くなった卵は無精卵ですのでこの時点で受精率を確認しておきましょう。
上手く受精した卵は2日程で孵化をはじめ稚魚が誕生しますが稚魚が誕生して1週間ほどはあまり手を出さずにそっと見守るようにしましょう。
稚魚が誕生してからの親魚の行動も様々で頻繁に稚魚を移動させたり、喧嘩を始めたり、挙げ句の果てには何もしない親魚もいます。
一番望ましい行動は稚魚に対してヒレや口などで新鮮な水を送るファニングを続ける行動で、ある程度の喧嘩は興奮することにより稚魚の餌となるディスカスミルクの出が良くなると言われていますので良いのですが激しい喧嘩は稚魚が親魚から離れてしまい挙げ句の果てには食べられてしまうこともありますので問題かもしれません。
最悪なのが稚魚に対して無関心な親魚でディスカスミルクを与えられずに稚魚が餓死してしまうこともあります。
ただこの時期は飼育者がディスカスにしてあげられることは何もなく、ただ見守るしかありません。
出来ることと言えば餌の与えすぎによる水質の悪化に気をつけるくらいでしょう。
孵化してから1週間位経つと親の体から分泌されるディスカスミルクをたっぷりと食べた稚魚がブラインシュリンプなどを食べれるようになります。
ブラインシュリンプをスポイトで親魚の体に吹き付けるようにして与えると体着している稚魚がブラインシュリンプを捕食しはじめ、お腹の辺りがオレンジ色に変わってきます。
このオレンジ色への変化がブラインシュリンプを捕食している証となりますので上手く食べてくれるようになったら1日に2〜3回に分けてブラインシュリンプを与えるようにしましょう。
稚魚がブラインシュリンプを食べるようになればいつでも親魚から離して飼育することは可能ですが稚魚飼育がはじめての方は2週間くらい親魚と一緒に飼育してから離すようにするといいかもしれません。
ただあまり長い間、稚魚と親魚を一緒に飼育すると親魚が稚魚につつかれて体がボロボロになってしまうことがありますので早めに離して飼育することをお勧めします。