
プラティの繁殖において、まず理解しておきたいのが「卵胎生」という独特の繁殖形態です。
一般的な魚は卵を産んで繁殖しますが、プラティは卵を胎内で孵化させてから稚魚の状態で産む「卵胎生」という繁殖形態をとります。
つまり、ある日水槽をのぞいてみると気づかないうちに小さな稚魚がスイスイと泳いでいるという経験をする飼育者が少なくありません。
体長わずか5mmほどの産まれたばかりの稚魚が、慣れた感じで泳いでいることがあるのはそのためです。
卵胎生という繁殖形態は稚魚の歩留まりが良く、品種改良も盛んに行われてきました。
卵のまま水中に産み落とされる魚と違い、ある程度育った状態で生まれてくるため、稚魚が外敵にやられるリスクが比較的低いのです。
これがプラティの繁殖力の高さの根本的な理由といえます。
オスとメスの見分け方
繁殖を意識するなら、まずオスとメスを正確に見分けることが大切です。
プラティのオスは「ゴノポディウム」という尖った生殖器を持っているため、一目で見分けることができます。
具体的には、しりびれ(臀びれ)の形状を見るのが最も確実で、メスのしりびれは扇形に広がっているのに対し、オスのものは細長く棒状に変形しています。
体長はオスで6cm、メスは7cm程度まで成長し、メスのほうがやや大きくなります。
繁殖に適したオスとメスの比率は、オス1匹に対してメス2匹が目安とされています。
オスが1匹に対してメスが複数いる状態にすることで、特定のメスにオスが追いかけ続けるストレスを分散させる効果があります。
ショップで購入する際は、メスのお腹のふくらみにも注意が必要です。
お腹周りが膨らんでいる個体はすでに妊娠している可能性があり、購入直後に水槽がプラティだらけになってしまったというケースもあります。
繁殖に必要な環境づくり
水温を26度前後に保ち、オスとメスがそろっていれば自然に繁殖します。
特別な産卵床を用意したり、複雑なコンディショニングを行ったりする必要はなく、飼育環境が整っていれば飼育者が意識しないうちに繁殖が進んでいくことがほとんどです。
水質については、pH7.0〜7.5の中性から弱アルカリ性が望ましいとされており、水替え頻度が低いと酸性に傾きやすいため注意が必要です。
水槽のサイズは60cm水槽程度で始めるのがおすすめです。
繁殖がうまくいくとたくさんの稚魚を産むため、水槽の容量をあっという間に超えてしまう可能性があります。
30cm水槽などの小さな水槽の場合は1〜2ペア程度に留めるのが無難です。
出産のサイクルと稚魚の数
プラティのメスは、出産してから1〜2か月後にまた出産するというサイクルを繰り返します。
1度に生まれてくる稚魚の数は少ないときで10匹ほど、多いときで30匹ほどにもなります。
さらに1回の交尾で数回の出産が可能という特性もあり、これが繁殖力の高さに拍車をかけています。
出産を重ねるごとに一度に産む数が増えていく傾向もあり、気がつけば水槽の中が賑やかになっていたという経験をする飼育者も珍しくありません。
また、生まれてから約3か月で交配が可能になるほど早熟なため、稚魚が成長してまた繁殖するという連鎖が続き、個体数が加速度的に増えていきます。
稚魚の隔離と育て方
生まれた稚魚をできるだけ多く育てたいのであれば、出産前後のタイミングで親魚と稚魚を分ける必要があります。
プラティの成魚は自分の稚魚であっても捕食することがあるため、隔離しなければ自然淘汰され、生き残る稚魚の数が減ります。
産卵ケースやサテライトと呼ばれるアイテムを活用すると出産のタイミングを見計らいながら親と稚魚を物理的に分けることができます。
出産後はメスを元の水槽に戻し、稚魚だけを産卵ケース内で育てるのが一般的です。
一方で、あえて自然繁殖を楽しむ方法もあります。
自然繁殖を行う場合は、水草や石、流木などで隠れ場所を作ってあげましょう。
水槽の底面積の半分くらいを水草にして稚魚の逃げ場所を増やしてあげると稚魚が生き残りやすくなります。
水草のジャングルをつくることが稚魚育成のコツです。
稚魚の餌については、栄養が高いブラインシュリンプを与えるのが最もおすすめですが、普段大人の個体に与えている人工飼料をすりつぶして与えるのでも十分問題ありません。
出産直後から餌を食べるので、栄養価の高いブラインシュリンプなどを与えると成長が早く、3週間ほどで1cmを超えてきます。
ある程度成長して親に食べられる心配がなくなったら、元の水槽に戻してあげましょう。
品種改良と掛け合わせの楽しみ
プラティの繁殖の醍醐味のひとつが、品種改良や掛け合わせによる色彩や模様の変化を楽しむことです。
交配が比較的簡単で、体色のバリエーションが元々豊富なことから、いろいろな柄の魚が誕生する楽しみがあります。
好みの体色や体型の魚をコレクションする方もいます。
プラティの品種改良は単独の種の範囲に収まるものではなく、ヴァリアタスやソードテールなど近縁種との交配も常習的に行われてきました。
現在プラティとして流通している魚のほとんどが、これら複数の種の交雑個体であるといわれています。
このため、異なる品種同士を同じ水槽に入れておくと予想外の模様や体色を持つ個体が生まれることもあり、それ自体がひとつの楽しみになっています。
ただし、意図しない交雑が進むと品種の特徴が薄れてしまうこともあるため、特定の品種の特徴をしっかり維持したい場合には、混泳させる品種の組み合わせに気を配る必要があります。
増えすぎを防ぐための注意点
繁殖の楽しさと表裏一体なのが、増えすぎへの対処です。
水槽の水質が安定しており、水草や隠れ場所が豊富だと稚魚の生存率がさらに高くなります。
また、豊富な餌がある環境では弱い稚魚も生き残りやすくなり、気づけば水槽がすぐにいっぱいになってしまうこともあります。
繁殖をある程度コントロールしたい場合は、あえて隠れ場所を減らす、餌を控えめにするなど、環境面で調整を行うことが有効です。
最も根本的な対策は、オスとメスを別々の水槽で飼育することです。
オスとメスを分けて飼育すれば繁殖することはありません。
ただし、購入時にすでに妊娠しているメスを入手してしまうケースもあるため、購入個体の状態には注意が必要です。
また、水槽内の限られた環境で交配が進みすぎると短命や大きく成長できない稚魚が生まれることがあります。
定期的に新しい成魚を迎えることで、こうした近親交配の影響を防ぐことができます。
そして忘れてならないのが、飼いきれなくなったプラティが河川に放流されてしまうことが問題になっているという現実です。
増えた個体は、知人に譲る、ショップに引き取ってもらうなど、責任ある方法で対処することが飼育者としての大切なマナーです。