グッピーの交配とは?
メダカやプラティとグッピーは交配できる?
グッピーの交配の仕方は?
こんなグッピーの交配に関する疑問についてご紹介いたします。
目次
グッピーの交配とは?
グッピーは飼育が容易で丈夫な体をしていることからアクアリウム初心者にも大変人気の熱帯魚です。
またグッピーは繁殖も容易なため、色々な種類のグッピーを掛け合わせて自分だけのオリジナルグッピーを作ることもできます。
そのようにグッピーの中でも色や柄の違ったグッピー同士を掛け合わせて繁殖を行うことを交配と呼びます。
交配とは交雑や異種交配などと言われることもあり、異なる種や異なる亜種の関係にある動物や植物を人工的に組み合わせて繁殖させること
基本的には繁殖のことを意味しますが、グッピーやメダカのように色や体型に違いがあるものを組み合わせて品種改良していく楽しみがある生物に対して交配という言葉がよく使われます。
逆にネオンテトラのように色柄が一種類のものは交配というよりも繁殖という言い方のほうが多く使われます。
そんなグッピーでも確実に交配を成功させるにはコツがあります。
グッピーは体色の他に尾びれの色、ひれの形状や柄の出方によって品種分けされています。
また、グッピーは染色体上の遺伝子に基づいて誕生します。
このグッピーの「品種分け」と「遺伝法則」について知っておくことがグッピーの交配を成功させるコツです。
品種分けのうち、特に「体色」について知ることは大切です。
グッピーの体色では「普通体色」「アルビノ」「リアルレッドアイ・アルビノ」「ゴールデン」「タイガー」「ブラオ」の6種類を覚えておきましょう。
「普通体色」とはグッピーの原種の体色を言います。
ただ通常、品種名でこの表現はされません。
「グレー」という言い方をされている場合や、体色の表示がない場合は普通体色だと思って下さい。
ショップに行くと、「RREA」という表記を目にすることがあります。
RREAとは「リアルレッドアイ・アルビノ」の略です。
現在国内で流通しているグッピーには大きく分けて国産グッピーと外国産グッピーの2種類がいます。
それぞれに魅力がありますが、グッピーを交配させたい場合には国産グッピーの購入をオススメします。
理由はいくつかありますが、一番の理由は国産グッピーは遺伝子構成がしっかり管理されているケースが多いからです。
それではここからは具体的なグッピーの交配についてです。
ノーマルのグッピーとアルビノのグッピーの交配
グレーを発色させる遺伝子をA、アルビノ遺伝子をaと仮定し、親をAA(グレー♀)、aa(アルビノ♂)と仮定します。
この場合、誕生するグッピーは全てグレー(Aa)となります。
これを「優性の法則」と言います。
劣性遺伝子のアルビノ遺伝子(a)が、優性遺伝子のグレー遺伝子(A)の影響で発現しなくなっています。
そして生まれたグッピー(Aa)同士で交配をした場合は、再びアルビノ(aa)を発現させられます。
これを、「分離の法則」と言います。
ブルーグラスグッピーとレッドグラスグッピー
ブルーグラスは人気の品種の一つです。
そんなブルーグラスグッピーのオスとメスを交配させた場合、必ずしもブルーが誕生するわけではありません。
ブルーグラスのオスメスともに「Rr」と仮定し、赤い発色を見せる遺伝子をR、赤い発色を見せない遺伝子をrと仮定します。
RrとRrを交配させた場合、RR(レッドグラス)が25%、rr(ブラオ)が25%、Rr(ブルーグラス)が50%の確率で誕生します。
「R」と「r」が対になっている「Rr」でないとブルーグラスは誕生しないのです。
これを「不完全優性」と呼びます。
少し難しいですが、言い換えると「対立遺伝子の優劣が明確ではない、または優性形質が他の形質を覆い切れていない」状態であるということです。
リボン(ロングフィン)がトリオ販売されている理由
ショップに行くと、リボンのグッピーはリボンのオスとメスのペアではなく、ノーマルタイプのグッピーがついていてトリオでいることが多いです。
それはリボンのグッピーのオスの殆どが交配機能を持たないからです。
(極稀に交配機能をもつ個体もいますが、遺伝の法則を考える上で、今回は交配機能を持たないとします。)
リボンのようなロングフィンのグッピーは、生殖器であるゴノポディウムが長く伸びているので繁殖には不向きです。
リボンを発現する遺伝子をR、ノーマル遺伝子をrとします。
そしてこの際Rが優性であると決まっています。
そうすると、もしリボン同士の交配で次のグッピーを得る場合、リボンのオスが交配向きでないことから、
- リボンのオスはノーマルのオス(rr)を用いるしかない(だからトリオになっている)
- また、対立遺伝子が両方Rである「RR」個体は存在しない
- よって、交配するメスの親はリボン(Rr)
ということです。
抑制遺伝子を持つスワロー(ロングフィン)の交配
スワローのオスのグッピーも、リボンのグッピーと同じく、ロングフィンで交配機能を持ちません。
もう一つ、スワローグッピーの交配のポイントは、「スワロー形質には抑制遺伝子が存在する」ということです。
つまり、スワローを発現する遺伝子を持っていても、スワローを抑制する遺伝子が働くとスワローは発現しないということです。
難しい話なので言い換えますと、 スワローを発現させるには以下の二つの条件を満たす必要があるということです。
- スワローを発現する遺伝子を持つ
- スワローを抑制する遺伝子を持たない
発現する遺伝子をK、抑制する遺伝子をSと仮定します。
どちらとも対立遺伝子であるk及びsより優性です。
この場合、スワローを発現するのは「KKss」または「Kkss」の遺伝子を持つ個体のみということです。
そして、
- 「KKss」(♀)と「kkss」(♂)の交配では、100%の確率でスワローが発現する
- 「KKss」(♀)と「kkSs」(♂)の交配では、50%の確率でスワローが発現する
ということがわかります。
ただ、スワローの交配においては、「KKss」と「Kkss」、「kkSS」「kkSs」「kkss」の見分けがつけられないということが難点です。
ここまではグッピーの遺伝の話をしてきましたが、次にグッピー意外の異種との交配は可能なのかについても考えてみましょう。
メダカやプラティとグッピーは交配できる?
まず、 グッピーとメダカが交配できるかについてです。
グッピーには「卵胎生メダカ」という名前がついているくらい、メダカとグッピーは見た目がとても似ています。
ただ、両者は見た目は似ていても実は全く違う種類なのです。
この事実をお伝えするだけで何となくお察しいただけるかもしれませんが、残念ながらグッピーはメダカと交配できません。
生物学、分類学において、生物を統一的に分類する「分類階級」というものがあります。
階級は 「界→門→鋼→目→科→属→種」の全部で7つからなり、全ての生物、動物は様々な分類群に分けられます。
例えば私たち人間をこの分類階級に当てはめると、「動物界→脊椎動物門→哺乳綱→霊長目→ ヒト科→ ヒト属→ヒト種」となります。
チンパンジーが人間と非常に似ているということは有名な話です。
チンパンジーも人間と同じく「霊長目→ヒト科」に分類されます。
ただ、チンパンジーが人間と交雑することはありません。
それはなぜかというと、チンパンジーはヒト属ではなく、チンパンジー属に分類されるからです。
このように、階級のうちの「属」が異なっていると交雑はできないとされています。
グッピーとメダカに話を戻します。
グッピーはカダヤシ目カダヤシ科ポエキリアルティキュラータ(Poecilia reticulata)属。
メダカはダツ目メダカ科メダカ(Oryzias)属です。
人間とチンパンジーの近さと比較してわかるように、両者はかなり遠い関係です。
次にグッピーとプラティの交配についてです。
プラティも、グッピーと同じくらいアクアリウムでは絶大な人気を誇っています。
それぞれ飼育や繁殖が容易にできることや、おとなしい性格で他の種類の魚と混泳しやすいことが理由であると考えられます。
また、なんといっても見た目が非常に魅力的で目を惹きます。
グッピーは大きくて優雅な尾びれが美しく、プラティはぷっくりとした丸みを帯びた姿がとても可愛らしいです。
こんなに魅力的な両者がもし交配すれば、どんな魚が誕生するのだろうかとすごくワクワクします。
しかし、残念ながらこちらも交配はできません。
グッピーはカダヤシ目カダヤシ科Poecilia reticulata(ポエキリアルティキュラータ)属。
プラティは メダカ目カダヤシ科Xiphophorus(クシフォフォルス)属です。
カダヤシ科であるところは同じですが、目と属は異なっています。
グッピーとプラティを同じ水槽内で飼育していると、グッピーのオスがプラティのメスを追いかけ回していたり、プラティのオスがグッピーのメスを追いかけ回していることがよくあります。
これは繁殖行動です。
なぜ交配できないはずのメスを追いかけているのかですが、 グッピーとプラティはともに卵胎生メダカであり、繫殖方法が同じなのでオスが区別をつけることができていないからではないかと考えられます。
グッピーと同じ卵胎生の魚で、モーリーやソードテールも人気種です。
モーリーはPoecilia formosa(ポエキリア属)で、ソードテールはXiphophorus(クシフォフォルス属)です。
つまり、グッピーはモーリーと交配できますが、ソードテールとは交配できません。
ソードテールと交配可能なのは同じ属名のプラティです。
グッピーとモーリーの雑種はモッピーと呼ばれています。
ただ、モッピーに繫殖能力はなく、残念ながら1代限りです。
グッピーの交配の仕方
グッピーの交尾は、オスが「ゴノポディウム」をメスの排泄肛に押し当てて精子を注入することで成立します。
メスはオスの精子をしばらくの間貯蔵しておくことができます。
そのため交配後、2、3回程は出産が可能です。
交尾が可能な性成熟の時期ですが、グッピーのオスは 生まれてから1ヶ月が過ぎた頃から尻びれがゴノポディウムへと変化しはじめ、生殖器が形成されます。
メスは2ヶ月過ぎから卵が形成され、3ヶ月程で出産が可能になります。
つまり、ショップで販売されているグッピーはほぼ間違いなく性成熟している為、繫殖可能な状態です。
確実に子どもを得るのであれば、オスとメス一匹ずつではなく、それぞれ複数匹を同じ水槽内に用意しましょう。
また、以下のようなことを加味して、オスの数はメスよりも多めに投入しましょう。
- オスとメスには相性がある
- オスの繫殖適齢年齢
- オスのグッピーのタイプがリボンのようなロングフィンであると、生殖器が長く伸びている為交尾が得意ではない
グッピーの交配まとめ
- グッピーの交配の鍵は遺伝法則を知ること
- グッピーがグッピー以外の魚と交配できるかどうかは、分類階級を知って判断するとよくわかる
- グッピーはメダカともプラティとも交配できないとされている
- グッピーの交配成功の為に、交配の仕方を知り、投入する数とタイミングを考える
今回はグッピーの交配に関する疑問についてご紹介しました。皆様のグッピー繁殖の参考にしていただけると幸いです。